弁護士コラム

2022/07

相続人がいないと、財産はどうなる?

原田 雅紀

民法では、誰が相続人になるのか定められています。
通常は、亡くなられた方の配偶者、子、親、兄弟姉妹が相続人となり、亡くなられた方の財産を引き継ぐことになります。
では、亡くなられた方に相続人が1人もいない場合はどうなるでしょうか?
例えば、自宅不動産や高額の預貯金・有価証券をお持ちの方が亡くなられて、その方に相続人がいない場合、自宅不動産や預貯金は誰のものになるのでしょうか?
また、もともと相続人がいたとしても、相続人全員が「相続放棄」した場合も同じ問題が起きます。

このような場合、利害関係のある人(債権者、管理会社、役所、特別縁故者など)が家庭裁判所に申し立てることにより「相続財産管理人」が選任されます。
そして、この相続財産管理人が亡くなられた方の財産を管理し、具体的には、不動産を売却したり、預貯金を解約し、他方で、滞納している税金や債務を返済するなどの処理を行います。

私は、これまで約30回、家庭裁判所から相続財産管理人に選任されており(かなり多い方だと思います。)、不動産・車の売却、預貯金の解約はもちろんのこと、様々な経験をしてきました。
ゴルフ会員権・リゾートホテル会員権の売却、部屋の中に残された物の処分などをしたり、財布の中に入っていた貸金業者のカードをきっかけとして、いわゆる過払金を請求したこともあります。
ときには、鍵屋さんを手配して、数年間も放置された建物の中に入って行き、電気が停まっていて灯りがつかない部屋の中で懐中電灯を片手に、あたかも泥棒のように通帳などの財産資料を探すこともあります。ちなみに、押し入れから数百万円の現金が見つかったことも!!
また、葬儀屋さんが長期間にわたって預かっていたままの遺骨を受け取り、お寺で永代供養したことや、墓じまいしたこともあります。

ところで、そのようにして相続財産管理人が集めた財産はどうなるのでしょうか?
その財産をもって、まずは相続財産管理人の報酬や実費に充て、さらには債務を返済したり、特別縁故者に分与した後でも余った財産があれば、国庫に帰属することになります。
簡単にいうと、国のものになってしまいます。

そのため、もし相続人がいない方が、将来亡くなったときの財産の行方を予め決めておきたいときは、必ず「遺言書」を残しておく必要があります。
遺言書を残しておけば、相続人ではない親族の方に財産を引き継いでもらったり、日々お世話になっている方や慈善団体などに財産を譲ることもできます。

心当たりのある方は必ず遺言書を準備しましょう。

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