弁護士コラム

2018/06

長期休暇を取るために

前田 八郎

先日,テレビでリゾートホテルの特集番組を見ていたところ,多くのホテルにおいて長期間滞在を前提としたサービスを用意して,「快適に,長期間を」を売り文句にアピールしていました。我々日本人から見ると,1週間以上の休暇を取ることは現実には難しく,仕事の調整,同僚への気配りなど大変な努力が必要となりますので,長期滞在を前提としてサービスに然程魅力を感じなかったのですが,ふと海外の方はなぜ長期休暇を取得できるのかとの興味を持ちましたので,好奇心の赴くままに少し調べていました。

先ず,世界各国の休暇日数(有給休暇日は含むが,土日などの休日を除きます。)を調べたところ,2013年のデータではありますが,1位は40日で「ロシア」,2位は36日で「イタリア」「スウェーデン」,4位は35日で「フィンランド」「フランス」「ノルウェー」「ブラジル」,8位は34日で「デンマーク」「スペイン」と続きます。日本は,26日の20位でした。意外だったのはアメリカが20日で25位ということです。

もっとも,休暇日数の内容(有給休暇日数と公休日の内訳)を見ると,上記8位まで国は有給休暇日数が22日以上であることが分かりました。一方,日本は有給休暇日数が10日で,公休日日数が16日(現在は17日)でした。つまり,日本は休暇日数の半分以上が公休日となります。それもそのはずで,世界の祝祭日の日数を調べると,日本は1年間で17日の世界1位でした。ちなみに2位以下は「香港(13日)」「シンガポール(11日)」「オーストリア(10日)」「韓国(10日)」「フランス(9日)」「スペイン(9日)」「ブラジル(8日)」と続きます。結局のところ,日本人は有給休暇を消費せずに,公休日に休んでいることが分かりました。併せて世界の有給休暇日数と消化率を調べると「フランス」「スペイン」「ブラジル」「オーストリア」は30日で消化率は何と100%です。一方,日本は20日で消化率は50%でした。ちなみにアメリカは19日で消化率は73.7%でした。

ここまで調べて気づいたことは,「フランス」「イタリア」「スペイン」などヨーロッパ諸国が比較的長期休暇を取得しているということです。では,なぜヨーロッパでは長期休暇を取れるのか。さらに言えば,有給休暇消化率が100%なのか。

その理由は,簡単で,EU加盟国(欧州連合28か国)の法律では,すべての企業に対して,すべての社員に最低でも年に4週間の休暇取得が法律で義務づけているからです。

有給休暇が30日間くらいあるので,これを利用してヨーロッパの方はバカンスを楽しんでいるのです。だいたい2~3週間の休みを取る人が多いそうです。特にフランスの休暇所得期間は長く殆どのワーカーが4~5週間の休みを取るそうです。もちろん,社員同士で調整しながらの時もありますが,事業所が1ヶ月閉店するなんてこともあるそうです。法律で連続5週間まで休暇取得可能となっているので誰も文句も言わない様です。

とはいえ,日本人にも有給休暇はあります。そして,それを連続して取得しても特段法に触れることもありません。しかしながら,冒頭で触れたように1週間以上の休暇を取ることは現実には難しく,仕事の調整,同僚への気配りなど大変な努力が必要となります。結局のところ,私の中では,長期休暇を取れるか否かは「国の文化である」との結論に至りました。

話は代わりますが,2016年9月,安倍内閣は働き方改革への取り組みを提唱し,現在,関連法案が国会で激しく審議されています。かかる働き方改革は,労働人口の減少,長時間労働,少子高齢化,労働生産性の低下を背景に,主に(ア)働き手を増やすこと,(イ)出生率を上げて将来の働き手を増やすこと,(ウ)労働生産性を上げることを目標とするものです。

働き方改革法案の成立によって我々の働き方がどの様に変わるのか。具体的な想像はできませんが,同改革の目標から察するに直ちに我々の休暇が増えるということはないでしょう。

元も子もない話ではありますが,我々日本人は欧米人の様に個別に長期休暇を取ることは文化的にも気質的にも難しいと思います。そのため,せめて連続した公休日を増やすことこそが日本人が長期休暇を取ることの近道だと思う次第です。

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