弁護士コラム

2017/10

デジタル遺産の相続

南竹 要

 デジタル遺産の相続。今後相続するにも避けて通れない問題になり始めています。銀行預金の操作もスマホやPCで容易に行えるようになって久しく、株取引もスマホでできる時代です。

 必然的に、大量のログインIDやパスワードを管理する必要が生じており、パスワードってどれだっけ?という問題に直面しないよう、日常用いるPCにリスト化して保存している人も多いかと思います。

 そのファイルが流失しては元も子もないわけで、クラウドなどに保存しないで、USBメモリに保存しよう、そう思っても、それを紛失しては困る。結局は便利さに負けて、ご自身のPCに保存してある人が多いのではないでしょうか。

 そんな状況で、突然亡くなった場合、相続人となった家族は、遺産の全容を把握することに苦労するはずです。今では通帳さえ発行しないネット通帳もあるくらいですので、どの銀行に預金があるのか、どの会社を通じて株取引をしていたのか、全容を把握しにくいわけです。

 まず、そもそもPCにログインするためのパスワードが分からなければ、遺産情報の一端にも迫ることが出来ません。

 普段から、家族をはじめとする大切な人と共有ファイルを作成して、そこへのアクセスを開いておくことにより、多くの問題を解決できます。共有ファイルには、他人はわからないヒントを用いるなどして、キーワードなどを推察できるようにするといいでしょう。

 その他、メールやSNSをはじめとする大量のアカウントの処理については、各社、自分が亡くなった場合にどうするか、事前に決められるようになっています。LINE、facebook、 Dropbox、 Evernote、 iCloudなどが代表的なサイトかとおもいます。例えば、「LINE アカウント 生前」などとGoogleで検索すれば事前設定の手続などが簡単に見つかります。

 また、弁護士法23条の2に基づく照会制度というのもあります。これは、弁護士会が、官公庁や企業などの団体に対して必要事項を調査・照会する制度で、対象者の口座の有無や、証券口座の有無・内容、携帯番号からの契約者住所、出入国の記録、生命保険の加入状況等多くの情報が得られます。

 探偵に頼む前に、弁護士照会制度を利用する方がコスト的にも安いことが多く、びっくりされる方が多いのが実感です。

 お困りの際には、一度ご相談されることをお勧めします。

(追記)弁護士業務、民事裁判の分野はIT化が遅れていることは有名なのですが、この度、政府が10月下旬に民事裁判手続きのIT化を推進するための有識者検討会を内閣官房に設置するという報道がありました。インターネットでの裁判所への書面提出、訴訟記録の電子化、テレビ会議システムを使用した審理の拡充などについて幅広く議論し、今年度内に提言をとりまとめる見込みとのこと。私としては、「どこでもオフィス」環境を最新のIT技術を駆使して構築することに注力してきておりますので、地方の方々、海外の方々にもここ横浜の地からより迅速かつ気軽にリーガルサービスを供給できるようになりそうです。

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