弁護士コラム

2015/09

成年後見制度

原田 雅紀

私が弁護士として働き始めたのは平成17年10月。
ですので,平成成27年10月からは,ちょうど10年が経過して11年目に入ります。

さて,残念ながら,私の祖父母は全員,私が司法試験に合格する前に亡くなってしまい,私が弁護士として働いている姿を知りません。
もう祖父母に会うことは出来ませんが,弁護士になった私は,祖父母と同じような多くの高齢者の方々と出会い,様々な方法で弁護士の立場からお手伝いをしています。
その中でも成年後見人等としての仕事があり,この10年間で,私は,計9名の方の成年後見人等に裁判所から選任され,現在でも5名の方の成年後見人等を務めています。

そこで,今回は「成年後見制度」について簡単にご説明したいと思います。

認知症,知的障害,精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は,不動産や預貯金などの財産を管理したり,施設入所契約や介護サービス契約を結んだり,年金や健康保険などの手続きをすることや,自分が相続人になる遺産分割協議をすることなどが難しい場合があります。
また,自分に不利益な契約であっても,きちんと理解できないまま契約を結んでしまうなど,悪徳商法の被害にあう恐れもあります。
このような判断能力の不十分な方々を保護し,支援するのが成年後見制度で,成年後見制度には「任意」後見制度と「法定」後見制度の2つがあります。

まず,「任意」後見制度は,本人が十分な判断能力があるうちに,将来,判断能力が不十分な状態になった場合に備えて,あらかじめ自分が選んだ代理人(任意後見人)に,自分の生活,療養看護や財産管理に関する事務について代理権を与える契約(任意後見契約)を公証人の作成する公正証書で結んでおくというものです。
つまり,元気なうちに,将来の後見人を自分で決めておくわけです。

しかし,「任意」後見契約を締結している方はまだ少なく,実際には,判断能力が不十分になってしまったために親族や周囲の方が困ってしまい,「法定」後見制度を利用するということの方が多いようです。

そして,「法定」後見制度は,本人のためにどのような保護・支援が必要かなどの事情に応じて,家庭裁判所が成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)を選任し,選任された成年後見人等は,本人の利益を考えながら,本人を代理して施設入所契約・医療契約や不動産売買契約,遺産分割協議などの法律行為をしたり,本人がする法律行為に同意を与えたり,本人がした不利益な法律行為を取り消すことによって,本人を保護・支援します。

さて,一般的に,誰が成年後見人等に就任するかという点について親族間で対立がなく,本人の財産も少ないような場合は,本人の親族の方が成年後見人等に就任することが多いです。
しかし,親族間で対立があるような場合や,多額の財産があったり,法律的な問題を処理する必要があるような場合は,本人の親族ではなく,私たち弁護士や司法書士などの第三者が成年後見人等に選ばれることになります。

成年後見人等に就任すると,最初にしなくてはならないことは,本人の財産状況や生活状況を調べることです。ある方の事案では,自宅の中から,全く使っていないような古い通帳が出てきたため,それを手がかりに調べてみたら,今まで把握されていなかった多額の預貯金の存在が判明するようなこともありました。

成年後見制度は,それまで長年にわたって頑張って生活してきた高齢者の方々にとってはもちろん,その方を支えている家族・親族にとっても,必要不可欠な制度です。
高齢者社会が進んでいる現状において,成年後見制度を利用して適正な財産管理や身上監護をすることによって,判断能力が不十分になってしまった高齢者の方々やそのご家族が,元気なころと同じように,普通の幸せな生活を過ごすことができるようになります。

弁護士11年目以降も,成年後見制度はもちろん遺言書作成や任意後見・財産管理契約などを通じて,多くの高齢者の方々のお手伝いをしていきたいと思います。

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