弁護士コラム

2013/04

地域司法ってご存知ですか?

浦田 修志

 皆様は、「地域司法」という言葉をご存じでしょうか。「司法」は三権の一つであり、国家の作用ですから、「地域」という言葉には馴染まないようにも思えます。しかし、法によって紛争を解決する司法の中心は、裁判所とそれを利用する市民です。裁判所には、最高裁判所と全国に8ヶ所ある高等裁判所のほか、都道府県ごとに地方裁判所・家庭裁判所(50ヶ所)があり、さらに簡易裁判所(438ヶ所)があります。弁護士会も、法律に基づいて各地の地方裁判所の管轄区域ごとに設置されています。すなわち、その地域の裁判所を利用するのは、その地域で生活する市民ですので、中央集権的な司法ではなく、地域住民にとって利用しやすい、地域に根差した司法であるべきです。これが「地域司法」の考え方で、弁護士会では地域司法の充実を目指す様々な活動をしています。

  その一つが裁判所支部の充実です。地方裁判所・家庭裁判所の本庁は都道府県の県庁所在地(北海道のみ札幌、函館、旭川、釧路の4ヶ所)にありますが、各地に支部が置かれていて、全国に203ヶ所あります。神奈川県では、川崎、小田原、横須賀、相模原の4ヶ所に支部があります。しかし、支部では、行政事件や簡易裁判所の控訴事件を取り扱うことができません。裁判員裁判も、支部で行われているのは全国で10ヶ所だけです。短期間で労働紛争を解決する労働審判に至っては、支部では東京地裁立川支部と福岡地裁小倉支部しか取り扱っていません。そのほか、3人の裁判官で審理する合議事件を取り扱うことができない支部が140ヶ所あり、そもそも裁判官が常駐すらしていない支部が46ヶ所もあるのです。

 支部で取り扱わない事件は、県庁所在地にある本庁まで行かなければなりません。しかし、場所によっては、本庁に行くのに時間も費用もかかり、裁判を起こすことをあきらめてしまう場合もあります。このように支部には本庁と比べて不便な点が多々あります。国民には等しく裁判を受ける権利がありますが、住んでいる場所によって受けられるサービスに差があっては不公平です。そのため、日本弁護士連合会や各地の弁護士会では、裁判所支部の充実を訴えてきました。神奈川県でも、たとえば、相模原支部で合議事件を取り扱うよう求めていますが(全国の政令指定都市に設置された支部の中で合議事件を取り扱っていないのは相模原支部だけなのです。)、地域司法を充実させるには、まず、国家予算の0.4%にも満たない裁判所関連の予算を増やすことが必要です。

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