弁護士コラム

2009/06

遺言の基礎知識(1)

浦田 修志

 今月は浦田が担当します。今回は遺言の方式についてお話します。
我々が多く相談を受けるトラブルの一つに相続の問題があります。遺言は、相続をめぐる争いを避けるための重要な手段です。特に遺言を作成する必要が高いのは、法定相続人以外の人(たとえば友人など)にも遺産を分けたいときや、法定相続分とは違った遺産の分け方をしたいとき、法定相続人の人間関係が複雑で遺産争いが起きる可能性が高いときなどです。

 遺言を作成するには、誰かの了解を得る必要はありませんし、いったん作成しても、いつでも変更・撤回できます。しかし、遺言は方式が決まっていて、違反すると、法的な効力が生じません。民法には何種類もの遺言が規定されていますが、ここでは、自筆証書遺言(遺言する人が遺言の全文、日付、氏名を自書し、押印するもの)と公正証書遺言(2人以上の証人に立ち会ってもらい、公証人に遺言の趣旨を伝え、公証人が筆記して、遺言する人と証人が署名・押印するもの)を知っていただければ十分だと思います。
自筆証書遺言は、作成が簡単で費用もかからず、内容も秘密にできるという長所がありますが、紛失や隠匿、偽造、変造のおそれがあるほか、検認(遺言書の偽造、変造を防止して証拠として保全するための家庭裁判所の手続)が必要という短所があります。他方、公正証書遺言は、公証人に作成を嘱託する必要がある、公証人の手数料がかかる、証人が必要という短所がありますが、保存が確実で紛失や隠匿、偽造、変造のおそれがなく、検認が不要という長所があります。
また、自筆証書遺言の場合、公正証書遺言と違って、公証人が関与しないため、方式違反で遺言が無効になってしまうことがあります。たとえば、自筆証書遺言をパソコンで作成すると無効になってしまいますし、日付を「平成21年6月吉日」と書いても、日付の記載がないものとして無効になってしまいます。いくら仲が良くても、夫婦が同じ書面で共同して遺言をすると無効になってしまいます。書き間違えた時の訂正の方式も決められているので、注意が必要です。
このように、自筆証書遺言の場合、方式違反が問題になることがあるので、完成させる前に、弁護士に見てもらうなど、専門家に相談した方が無難だと思います。

 

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